家族のいない静かな夜
お盆も終わりに差し掛かったある日、妻と子供達は妻の実家へお泊まりに。
仕事から帰った私は、いつもとは打って変わった家の静けさに戸惑っていました。
いつものように、
「パパ。」
「パパ。」
「パパ。」
と呼ぶ声もなく、子供達に向ける私の怒号もありません。
相変わらず妻や子供達がいないと、私の夜は退屈でメリハリがなく、ミッドライフクライシス真っ只中といった感じなのです。
明日は仕事もお休み。
こんな時だからこそ、音楽制作やブログ、社労士資格の勉強を頑張ればいいのに、なぜか、こんな時だからこそできません。
そう。
こんな時はいつも必ず、弱い自分が肝臓の辺りからひょっこり顔を出して、
プシュ!
「あぁ〜……。」
と、天敵(缶ビール)と仲良くしてしまうのです。
天敵との戦い
自慢のiPadを使って、もう何度も見たはずの動画やアニメを眺めながら、
プシュ!!
「ふぅ〜……。」
プシュ!!!
「ふぃ〜……。」
プシュ!!!!
「うっぷ……。」
プシュ!!!!!
「ひっく……。」
………………。
私は強烈な喉の渇きに襲われました。
辺りは真っ暗です。
何が起こっているのか、すぐには分かりません。
身体は布団の上で横になっているようです。
どうやら眠っていたようです。
今は何時だ?
今日は仕事か?
まだよく分かっていません。
びっくりするくらい重たくなっている頭と身体をなんとか起こすと、隣の布団で妻と長男が眠っていました。
そこで初めて、
「ああ、帰ってきたのか……。」
と2人の存在に気付き、現在の状況を理解することができました。
どうやら私は、天敵と遊びすぎて疲れて眠ってしまったようです。
私は遊んだ記憶を手繰り寄せます。
しかし、その記憶は動画編集されたようにスッパリとカットされている部分が多く、かろうじて残っている動画も画質が悪く、よく見えません。
私はまた、貴重な人生の時間を失ってしまったのです。
とりあえず、この強烈な喉の渇きをなんとかしなければ。
私は重たい身体を引きずり、なんとか台所へ向かいました。
必死で命の水を飲み、生きている喜びと後悔を同時に噛み締めます。
なんでこんなになるまで飲んでしまったんだ……。
また朝になったら、しんどいぞ……。
もう無駄な一日になるであろう明日に悲観しながら、私はトイレへ向かいました。
深夜に現れた未確認生命体
台所から廊下へ出て、トイレに向かって歩いていた――
その時です。
シュシュシュ!
バシャバシャ!
私の左足のすぐ近くで、何かが動きました。
「うわぁああ!!」
私は左足を跳ね上げ、「しぇー」のポーズになって驚きました。
何かがいます!!
何か細くて長いものが、とてつもない速さで右、左、右、左と動いています。
なんだこれ……。
こわっ。
虫……?
私は「しぇー」のポーズから恐る恐る左足を廊下へ戻し、ゆっくりと姿勢を低くしてみました。
視力が悪い者の宿命です。
すると、その未確認生命体は、透明のナイロン袋の中を動き回っていることが判明しました。
さらに、先ほどの「バシャ」という音は、どうやら水の音だったことも分かりました。
そやつらは、ナイロン袋に入った水の中から私を驚かせたのです。
なにこれ……。
気持ち悪……。
…………。
とりあえず、見なかったことにしよう。
そして私は無事トイレへ行き、帰りはその物体の前を早足で通り過ぎ、布団へ戻りました。
おやすみなさい……。
私は何も見ていない……。
そして男は、まだ知らない
しかし、この時の男はまだ知らなかった。
驚いた拍子に、右足首の捻挫を悪化させていたことを。
そして翌日には、倦怠感たっぷりで、さらに右足首の捻挫まで悪化させた身体で、大変な仕事をしなければならないことも――
この時の男は、まだ知らない。
積み上げ記録 8月15日〜8月17日
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